2015年7月18日土曜日

Catskill博物館 展示会 レポートその5

THE JAPANESE ARTISAN SPIRIT     Report NO.5 最終回

Catskill展示会のレポートの最終回です。
まずはわざわざロンドンから駆けつけてくれた、イギリスをベースに国際的活躍をされている懐石料理シェフ石井さんからの、同じクリエーターとしての嬉しいコメントから。

私は京都の懐石料理店で修行し、日本文化の真っただ中に関わったのちに海外でそのスキルを持って歩き続けています。同じ”もの”を作る者として秋丸さんの竿は見て、使って、バックグラウンドを聞いて、すべてにおいて世界レベルでの一流を感じることが出来ます。
今回キャッツキルでのエクスヒビションに同行させていただき、歴史あるアメリカのフライフィッシングの世界の中枢に展示されてもその存在感は素晴らしいものでした。基本を忠実に守りながらも、竹という素材に日本人ならではの繊細な感性で謙虚に向かい合い続け、たぐいまれなるセンスで仕上げられた秋丸さんの竿は、名だたるバンブーロッドに見劣りしないばかりかそれを超えていました。一流のものだけが持つ風格を感じました。
 今回旅行中にデラゥエアリバーの川中に立ち続けて多くのことを語る機会に恵まれましたが、その話の中から、あるいは秋丸さんの周りに集まる本場の釣り人やビルダー達を見てその人柄から、秋丸ロッドがなぜ人を魅了してならないのかが分かった気がしました。


石井

世界の第一線で活躍されている石井さんから多大なエネルギーを頂いた一週間の旅、改めて刺激的な方でした。


さて展示会レポートの最終回は私の弟子君の話です。
今回のCatskill展示会は私のロッドを中心にディスプレイしましたが、私の主催するバンブーロッドビルダー養成塾
「竹竿塾」の生徒にもアメリカデビューのチャンスを設けました。
約1年前、この展示の計画が本格的に進み出した時点で、教え子の数人の塾生に、自由課題として、完成度の高いロッドはCatskill博物館で一緒に展示する事を約束、各生徒達が思い思いの自慢作を1年かけて制作。
しかし、やはり本場アメリカでの発表となるとハードルは高く、みんな良い所迄行ってるのですが、なかなか合格レベルに達するロッドは生まれませんでした。
 その中で唯一2012年春入塾の望月雄大君のWATAKE材で作った7’4”4番のヤマメ用ロッド(ソリッドロッド)は、何処に出しても通用する素晴らしい完成度で仕上がり、展示のされる事になりました。
画面左が望月雄大君の7’4”#4ヤマメ用
フルウェルズを基本とした望月君のオリジナルグリップ。グリップ下のウッドチェックの処理が上手い。
ちなみに彼はこのロッドを作るのに、ティップブランクとバットブランクをそれぞれ4本、各ブランクのテーパーを少しずつ変え制作、ジョイントを同じサイズにしておき、ティップとバットの各組み合わせ16種類の中からベストの組み合わせを選び出し、それをフィールドで使いながら微調整すると言う、時間と手間はかかるが、出来上がった2pcロッドはきわめて完成度の高い、尚かつ望月の世界観の表現されたロッドに仕上り、本場アメリカCatskill博物館での展示となったわけです。
 教え手の私が感心したのは(彼の個人的な理由ですが)彼は会社勤めをやりながらのロッド制作と、フィールドテストを終えた訳ですので、物理的な持ち時間が少ないなか,相当ハードな1年だった様ですが、何が何でも作業をやり遂げ、展示レベルに達したいと言う彼の強い意志が、ロッドを完成させたのですね。

 私は竹竿塾の生徒達に本物を期待して教えています。竹竿塾の授業は基本2年、2年間竹竿塾で頑張れば、間違いなくロッド(の形)は作れる様になりますが、オリジナリティを持った本物ロッドとなるとその後の各生徒の情熱と研鑽努力によって本物になれるか,どうかの結果が大きく変わります。
 単純な事で、何の世界でも同じだと思うのですが、他人と同じ様にやってれば、同じにはなりますが、他人以上には成れませんよね。
又、生徒に何時も言うのですがプロは結果だと。オリジナリティを持ったオリジナルロッドの完成度然り、更にその向こうでのビジネスが伴ってのプロのバンブーロッドビルダーだと。
今回の望月ロッドは誰に見せても恥ずかしく無い,ワールドクラスの素晴らしいロッドに仕上がりました。ロッドの完成度が上がる中、彼の希望する、北海道での工房設立と制作活動の実現性が、近づいた様に私には感じられました。
 好きな釣り世界で、バンブーロッドビルダーとして生きて行きたい。
3年前、竹竿塾の入塾面接試験に現れた時に彼が言った言葉を思い出します。
左が望月雄大。こう見えても頑固な職人肌。人柄もデザインセンスも抜群。完全なプロ向き。
アキマルは竹竿塾を通じて、世界で通用するプロフェショナル・バンブーロッドビルダーに成りたいと言う人を応援します。
アキマル竹竿塾は誰にでも門戸を開けています。興味の有る方はアキマルウェブページ
http://www.akimaru.jp      竹竿塾のページをご覧の上、ご連絡下さい。

Catskill展示会はおかげ様で評判は大変良い様で、好感想のメールも届いています。
改めて感謝です。駆け足でご報告したCatskill展示会レポートは今回で終了させて頂きます。
今バーモントに有るアメリカ最大のFF博物館アメリカンフライフィッシング・ミュージアムで、このCatskill博物館と同じ内容の展示会をやったら?という提案が友人から上がってますが、もの凄いエネルギーを必要とする外国での展示会・・・・大変ですけどね。条件さえ合えば、老体に鞭打って、もう一度頑張ってみようかなと思ってます。
Catskill展示会レポート全5回、お付き合い有り難うございました。
博物館が用意してくれたポスター。地元の新聞からも会場で取材を受けた。
ロンドンからわざわざ駆けつけてくれた名シェフ石井さん。有り難うございました。
カナダから遠路サポートに来てくれた弟子のJP。彼のお陰で総てが上手く行った。ありがとうねJP。


JPや石井さん以外にも沢山の方のご協力頂きこの場をお借りして改めて、有り難うございました。
10月15日でCatskill博物館での展示を終了、12月初めに東京渋谷のアートギャラリー、ギャラリー・ニ・モードで同じ展示内容で展示会を開催します。是非お遊びにいらして下さい。


次回の 10DAYS 7月25日公開 は、トム・モーガンとのコラボレイトロッド第2段、
トムのデザインのブランクで、アキマルが制作するNEWファイバーグラスロッドと
第2世代目を迎えたアキマル・オリジナル、バンブーフェルールロッドの解説等など。
次回からの 10DAYS は本来のロッド制作話をさせて頂きます。ご期待下さい。